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2018年11月

両面焼きの魚焼きグリルの不都合

   ガスレンジを新しくして、一年が過ぎました。それまで使っていたガスレンジの魚焼きグリルは上方からのみ加熱する片面焼きでしたが、新しいガスレンジの魚焼きグリルは、魚の上面と下面を同時に焼くことができる、両面焼きです。
   旧来の片面焼きの魚焼きレンジでは、調理中に何度も焼き加減を確認してひっくり返したり、また元の面を焼き直したりと、手間がかかり、また、その度にグリル部分を開閉すると、熱の有効利用の観点からも問題がありました。ひっくり返す工程において魚の身を崩してしまうこともありました。そのため、魚をひっくり返す必要の無い両面焼きグリルは大変画期的であり、当初はこれを使って、魚をどんどん焼き、焼き魚をたくさん食べようと思いました。
   しかし、調理後の清掃があまりにも大変なため、むしろ、魚を焼く回数はどんどん減り、現在では、ほとんど使用しなくなりました。魚をひっくり返さないのは良いアイディアであったものの、それを実現するために、逆に不都合な点があまりにも多くなりました。したがって、この両面焼き魚焼きグリルは、失敗作であると結論せざるをえないです。この商品の開発のため努力された技術者の努力には敬意を表します。しかしながら、使う人間の労苦を考えると、従来の片面焼きの方が優れています。もし新規で購入する方がおられましたら、両面焼きは下記のような不都合があることを知っていただきたいと思います。

   まず、あまりたいした不都合ではありませんが、両面焼きの魚焼きグリルを有するガスレンジは、従来の片面焼きの魚焼きグリルを有するガスレンジよりも、レンジ本体の背が高くなります。通常、ガスレンジを乗せる台は、ガスレンジの高さを見込んで、流し台との高さの差がつけられています。古いアパートの流し台とガス台との高さの差は、片面焼きの魚焼きグリルを有するガスレンジを想定しているため、両面焼きの魚焼きグリルを有するガスレンジを設置すると、ガスレンジの上面は、流し台上面よりも若干高くなります。
   最大の不都合は、油汚れの清掃があまりにも大変なことですが、従来の片面焼きとの比較を行う以上、まず、魚を焼く時の状況を、片面、両面焼き、それぞれについて記述します。

片面焼きの魚焼きグリルを使った調理
    魚焼きグリルの部分は引き出し形状になっています。堅牢な造りとなっており、途中まで引き出して片持ち状態にしても、強度上の問題を生じることはないです。清掃等で外しても、引き出し部分は不便のない強度を有しています。
    引き出しの底は受け皿になっていて、水を張ります。水を張る目的としては、過熱防止と、適度な湿度の供給の2つがあると思われます。従って、調理にあたっては、先ず引き出し底面の受け皿に水を張ります。受け皿には、平行した複数の金属棒からなる棚面を載せるようになっています。この棚面の金属棒が格子状であれば、網と呼ぶことができるのですが、直行する棒がなく、平行棒のみですので、このあとの記述も「金属平行棒」とさせていただきます。標準の調理法は、おそらく、この金属平行棒に食用油を塗って、魚をのせて焼くことと思われます。しかし、私はこの金属平行棒にアルミ箔をしき、魚との付着を防ぐ目的で、平行棒間でアルミ箔を下方にたわませて、アルミ箔が波打つようにしました。単に平行棒間でアルミ箔を押し込んだだけでは、アルミ箔全体が反り返り、上手くありません。そのため、アルミ箔の端の辺、金属平行棒に直交する辺ですが、その辺を少し平行棒方向に押し縮め、それで少し剛度が増したアルミ箔の端を平行棒に押しつけ、少し巻き付けるようにして、アルミ箔全体が反り返らないようにしました。このようにアルミ箔を波打たせことにより、魚との固着は防げますので、固着防止の目的で食用油をアルミ箔に塗布することはしませんでした。塗らなくても、魚からにじみ出た脂が、魚とアルミ箔の間に介在するため、固着はほとんど無かったと記憶しています。
    さて、アルミ箔に魚をのせ、ガスで上面から焼きます。当然片面のみ焼きますので、魚の身の反対側を焼くタイミングを見計らうべく、加熱中に何度もフタを開けて引き出し、焼け加減を確認しました。魚焼きグリルのフタはガラス製ですが、実際は閉じている状態では中の様子が見えないので、何度も確認する必要がありました。そして時々魚をひっくり返し、当初表だった面の焼きが足りなければ、もう一回ひっくり返すこともしました。柔らかい魚の場合は、ひっくり返す際に魚の身を崩してしまうこともあり、確かにひっくり返す作業がなければ、身を崩すことはないし、フタを何度も開閉することによる熱のロスや、魚をたびたび外気に当ててしまうことは軽減できると思われました。
    調理後の清掃作業は大変簡単です。油の大半がアルミ箔上に滞留するので、アルミ箔を処分すれば、それ以外にこぼれる油は少量にとどまります。受け皿の水はこの時点ではお湯になっており、そのお湯に落ちた油は柔らかいものであり、お湯と一緒に処分しやすいです。のちほど書きますが、このお湯が適度な湿気をグリル内部にもたらすことの効果もあるかもしれません。また、アルミ箔を載せますので、金属並行棒への魚の固着はありませんし、油汚れも、アルミ箔が破れたごく局所のみに付く程度です。従って、清掃は、受け皿のお湯を捨てて、引き出し全体を軽く洗い、金属平行棒をさっとすすぐ程度で終わります。

両面焼きの魚焼きグリルを使った調理
    両面焼きの魚焼きグリルも、本体から引き出して魚を載せる作業等を行います。引き出しを本体から取り外すことも可能ですが、片面焼きの引き出しに比べて大きな形状をして重い一方、剛度の面で劣りますので、外したときの取り回しが良くありません。そのため魚を載せる金属平行棒の棚面だけ外して作業したくなりますが、これの取り外しが簡単ではありません。従って、魚を載せるなどの作業は、引き出しを途中まで引き出して、片持ち状態で行うことになります。ちなみに、加熱中、あるいは加熱直後に金属平行棒の棚面を動かそうとすると、やけどの恐れがありますので注意が必要です。
    この引き出し部分の底部に、魚から落ちてきた脂を受け止める金属製の皿があります。その受け皿には「水を入れずにお使い下さい」と書いてあります。実際の所、その皿は深さがないので、水を張ってもこぼすことになり、水を張りたくてもできないのが実際です。
    標準の調理法は、金属平行棒の棚面に、魚と金属棒の固着を防ぐための食用油を塗り、魚を置き、上下両面から加熱するというものです。焼き加減が見えないのは、片面焼きでも同じですので、当初は何度か引き出しを開けて、焼き加減を確認することになります。
    ただし、ここは機器の新しさのおかげかもしれませんが、加熱時間を指定したタイマーでの加熱です。ガスショップの人も言っていたのですが、どのくらいの厚さの魚の切り身が、上下どのくらいの火力で、何分ぐらいで焼き上がるかの経験を積めば、焼き加減を確認するための開け閉めはしなくても良くなります。経験に基づいて火力と加熱時間をセットすれば、ちょうど良い焼き上がり状態で自動的に火が消えてくれることになります。ただし、これは何度かトライアンドエラーを繰り返して、データを取っておくことが必要でしょう。
    とりあえず、両面焼きの魚焼きグリルで、魚が焼き上がったとしましょう。ひっくり返す必要がないので、魚の身を崩す可能性が小さいのでは、という期待は裏切られます。魚が金属平行棒にがっちり固着して、外すときに身を崩す可能性が高いです。少なくとも、皮の一部は金属棒に固着して、身を外すときの損傷は避けられません。メーカーの方でもこの現象に気がついたのでしょう。金属平行棒から魚の身をはがすための器具を付属品として用意しています。この道具は幅の広いフォークのようなもので、金属平行棒の間隔に合わせて先端の凹凸が付けてあるので、これを使えば、魚の身の全面崩壊は避けられます。しかし皮の損傷は避けられません。干していないイワシは、この道具を使っても身が崩れるかもしれません。この道具を使わずに菜箸で魚の切り身をはがそうとすると、身が崩れます。ちなみに、さきほど金属平行棒の棚面を外そうとするとやけどの恐れがあると書きました。もし、この魚外しの道具で、その用途だけでなく、金属平行棒の棚面を支持して、それを引き出し部分から外せるような機能がこの道具に付与されていれば、大変ありがたかったと思います。
    なぜ、魚が金属平行棒に固着するのでしょうか。固着防止としてあらかじめ食用油を金属並行棒に塗りつけても、だめです。片面焼きの時は、アルミ箔をしきました。アルミ箔を波立たせてくっつきにくくする工夫もしますが、実際の所は、魚からにじみ出た脂が、魚とアルミ箔の間に介在するため、固着しません。両面焼きの場合は、アルミ箔を敷いたら下方からの加熱が遮断されて両面焼きの意味がなくなりますから、アルミ箔は敷かないことになっています。そして、加熱中に魚からにじみ出る脂は、受け皿に落として、ためておく構造になっています。魚と金属棒の間に、ある程度の油・脂が存在すれば固着は防げるのですが、脂は常に重力を受けて下に落ちますので、魚と金属棒の間の油はその場に存在できません。金属平行棒のもともとの機能は、魚の重力を受け止めることです。脂が存在しなければ、金属棒は魚に直接接触することになり、結果、固着してしまいます。加熱中ですので温度が高く、脂も柔らかくなって下に落ちやすくなっていると思われます。
    ここからは若干、推論めいたことになります。片面焼きの時は、底部に水を張りました。この水が加熱によりお湯になり、少し湯気が立ちます。この事が、魚の固着問題にどの程度影響するかは、微妙だと思います。湯気とは言っても、水と油ですから。湯気が充満していた方が、魚の固着は少なくなりそうだ、というのは、感覚的なものだと思われます。ここで、片面焼きの魚焼きグリルにおいて湯気が立つことを取り上げたのは、ひとつには焼き上がった時の魚の身の柔らかさに影響しないか、と考えるからであります。すなわち、片面焼きにおいては、グリル内に湯気が充満しますので、魚の身がソフトになるように思います。一方、両面焼きにおいては、水を張ることはするなと書いてありますし、実際底の浅い受け皿に水を張ることは困難です。そうすると、加熱中のグリル内は結構ドライな状況になるように思います。そして、魚の身に含まれていた脂は、どんどん下に落ちます。従って、両面焼きにおいては魚の身が水分・脂分を共に失い、よく言えば身が締まる、悪く言えば硬くなるイメージがあります。ただしこれは観念的な想像であり、片面焼き、両面焼きで焼き上がった魚のソフトさに差が出るかの比較はしておりません。健康上の配慮からすれば、脂が除去される両面焼きの方が好ましいでしょう。しかし、湯気の立たない、ドライな環境であることは、次に述べますように、両面焼きの魚焼きグリルの最大の欠点をもたらします。

調理後の清掃
    両面焼きの魚焼きグリルの最大の欠点は、調理後の清掃です。これがあまりにも大変なために、焼き魚をしようという気が失せてしまうのです。調理により発生する汚れについては、金属平行棒に固着するものと、下の受け皿に溜る脂の2点について、分けて議論する必要があるでしょう。その前に、一点、安全上の観点から注意することがあります。調理直後に清掃することはできません。金属平行棒にしろ、脂の受け皿にしろ、調理直後は熱くなっていて、触るとやけどの恐れがあります。冷めるまで待たないといけないのです。これは家事遂行上の時間管理に影響を及ぼします。また、冷めてからでは脂の粘度が増し、より除去しにくくなるという問題もあります。この点、片面焼きの魚焼きグリルは、調理直後であっても、熱い部分に触ることなく引き出し部分を取り外し、流しの所へ持って行って上から水をジャッとかければ、熱は下がりますし、水をかける行為により清掃作業自体がほぼ終了します。
    金属平行棒の汚れについては、先ほど書きましたように、魚が固着しますので、それを丁寧に除去する作業があります。現状、私の金属平行棒の棚面は、黒い汚れが固着して大変見苦しい状態になっています。興味深いことに、魚が直接触れる中央部は、金属の光沢面が見えるのですが、棚の周縁部の方がむしろ黒く汚れています。この汚れは硬く、包丁の背を使えばそぎ落とすことができるようですが、それをすると金属棒のメッキを損傷してしまいそうなので、汚い状態で諦めています。
    さて、最大の問題、受け皿に溜まった魚の脂です。調理中脂が溜まっていく過程においては、受け皿に水を張っていないドライな状況ですから、加熱により水分は飛ばされていきます。従って脂は濃縮され、調理終了時には受け皿にべっとり、濃い脂が溜まります。これを冷めてから清掃するとなると、濃縮された脂の粘度がさらに増して大変除去しにくいものとなります。お湯をかけて脂を柔らかくし、洗剤をたっぷり注いでも、容易に除去できるものではありません。この作業にスポンジタワシを使うと、1回でだめになります。タワシから脂を除去することができないからです。そのため、キッチンペーパー数枚を「使い捨てタワシ」として使い、洗うのが良いでしょう。この濃縮された魚の脂は、洗剤が溶かしにくい組成なのかもしれません。大変な作業になります。影響はタワシにとどまらず、ゴム手袋がテカテカ・ゴワゴワになります。

対策
    上記で分かるように、両面焼きの魚焼きグリルの清掃は大変な作業です。清掃で考えつく改善法として、例えば、夕食の調理に使ったとします。冷めてからでないとやけどの恐れがありますので、寝る前に、大きなバットに洗剤と水を入れ、金属平行棒の棚面と受け皿をその中に一晩漬けて、翌朝洗う、という方法がありそうです。棚面と受け皿は結構大きなものですから、これが入るバットも大きなものが必要とされ、いまだ入手していませんので、この方法の有効性は確かめておりません。
    調理で考えつく方法としては、なるべく片面焼きの魚焼きグリルでやっていることに近づける、というのがありそうです。すなわち、金属平行棒の面にアルミ箔を敷きます。そうすると、上面はともかく、下面はアルミ箔が下から空焼きされることになります。これは良いこととは思えません。そうなると、過熱防止のために、水を張りたくなりますから、現状浅くて水の張れない受け皿の上に、加熱されても良い別のバットを置いて、それに水を張る。しかしどうでしょうか。こんな方法が安全上問題ないとは言えません。断言しますが、このウェブページはこの方法を推奨しません。手間の面から言っても、試してみる気にさえなりません。
    以上から、現時点で思いつく最も妥当な対策は、両面焼きの魚焼きグリルを使わない、ということになります。残念な結論ではありますが、その通り、私は現時点で使っておりません。

その他の考察
    魚焼きグリルを使わない、に関して、最近図書館の本で浜内千波さん著「浜内千波お魚料理はじめます―お魚ビギナーのためのやさしいレッスン」家の光協会 (2009/08)を拝見しました。その本では、グリルを使うと清掃が大変だから、フライパンで魚を焼くことを提唱していました。それは良いアイディアだと思います。私も試してみたく思います。これを言うと難癖に近いのですが、ただし、フライパンで焼くというのは、オープンな環境での加熱ですから、熱やガスの有効利用から考えるとどうでしょうか。魚焼きグリルのようなクローズドな環境の方が、熱やガスの有効利用の面からは優れているかもしれません。地球温暖化に対して、一人の人間が出来ることは限られるかもしれませんが、フライパンで魚を焼くことの環境負荷はどうなのか、気になる所ではあります。
    さらなる手立てとして、塩焼きを諦めて煮魚に走る、というのも考えられます。実際、私が採用しているのはこの方法です。しかし、煮魚の欠点というものも存在します。私が一番欠点だと思うのは、摂取塩分量です。魚の生臭みを感じないように煮魚を調理するには、どうしても塩分量が多くなります。健康上の配慮から、塩分量は可能な限り、下げたい所です。魚の生臭み対策として、煮魚にはショウガの使用が必須です。しかしショウガの保存がどうも上手くいきません。ラップして冷蔵庫に入れればぐちゃぐちゃになってカビが生えたりする、ラップしないで冷蔵庫に入れれば乾燥作用で干からびてしまう。ショウガは割とお値段がするのに、保存でだめにしてしまうことが多いです。これらを考えますと、最小の塩分量で臭み対策も要らない塩焼きは、魚料理として圧倒的な地位にあると思います。片面焼きのグリルを使って、手軽に塩焼きができた以前の生活が懐かしいです。
    魚焼きグリルについてこれほどの長文というのも珍しいと思います。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い形式で、両面焼きを悪く書きすぎたかもしれません。しかし、日本国内で家事労働に従事している人々の負担の総体を考えますと、両面焼きの魚焼きグリルは、あまり良い道具とは思えません。もし今後の技術開発により事態が改善されるのであれば、それは素晴らしいことと思います。

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